世界の小説 名作探訪

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モンテ・クリスト伯② 脱獄、そして宝の島へ

 

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hirozonは仕事柄、よく出張先でキャバクラに連れていかれます。でも苦手なんですよ。女の子と話しをするのが。だって「モンテ・クリスト伯がねぇ〜」とか言ったってドン引されるだけでしょう・・・と思ったらそうでもないみたいです。 結構知ってるんですよ。テレビドラマのおかげで。

 

hirozon「最近モンテ・クリスト伯を読んでてね・・」

女の子「あっ!私もテレビで見たよ〜。本では主人公の名前は何ていうの?」

hirozon「エドモン・ダンテス」

女の子「テレビでは柴門暖(さいもんだん)だよ。似てるね!」

hirozon「ファリア司祭も出てくる?」

女の子「ファイリア真海!まったく同じだね。」

 

・・みたいな他愛もない会話で場をしのぐことに成功。 ということでモンテ・クリスト伯はキャバクラでも役に立つのです。 「ありがとうモンテ・クリスト伯!ありがとうディーン・フジオカ!」

 

モンテ・クリスト伯を読んで「いざ、キャバクラ!」

 

さて、今日は第二巻(岩波文庫版)のご説明です。

 

◆主な登場人物

  • ダンテス:脱獄後、モンテ・クリスト島で宝を見つけ巨万の富を得る 
  • ブゾーニ司祭(ダンテス):カドルッスを訪ねダンテスが死んだことを告げる
  • イギリス人商人(ダンテス):破産寸前のモレルを窮地から救う
  • 船乗シンドバッド(ダンテス):フランツを地下宮殿に招く

 

  • ファリア司祭:獄中で病死。宝のありかをダンテスに託す
  • カドルッス:ブゾーニ司祭にダンテスが罠にはめられた経緯を話す
  • カルコント:カドルッスの妻
  • ボヴィル:刑務検察官。イギリス人商人に監獄の記録を見せる

 

  • アルベール・ド・モルセール:フェルナンとメルセデスの息子 
  • フランツ・デピネー:アルベールの友人。モンテ・クリスト島で船乗りシンドバットと称する紳士と出会う

 

  •   ルイジ・ヴァンパ:山賊の親分。船乗りシンドバットと関係がある

 

◆あらすじ

1.脱獄、そして宝島へ

 「モンテ・クリスト島を忘れるなよ!」こう言い残して、ファリア司祭は病で息を引き取ります。またもや一人ぼっちになり絶望するダンテス。しかしある考えが浮かびます。

 

死体は袋に包まれ外に運び出され埋葬されます。そこでダンテスは袋の中の死体と入れ替わり、脱獄を図ろうとしたのです。

 

ダンテスは袋の中でその時を待ち続けます。やがて人夫により袋が運び出され、そのまま崖から海へ投げ捨てられました。とうとうシャトーディフから脱獄することに成功したのです!時は1829年。投獄されてから14年が経っていました。

 

ダンテスは命からがら真夜中の海を泳ぎ続け、ティブラン島にたどり着きます。そして偶然通りかかった密輸船ジュヌ・アメリー号に助け出され、しばらくの間彼らと共に密輸業に手を染めます。ダンテスの航海技術が買われ、彼らの信頼を得ることができたのです。

 

そんな中、密輸業者間の交易の中立地帯として、期せずしてモンテ・クリスト島に上陸することになります。ダンテスは仲間を欺き、一人で島に残り宝さがしを始めます。そして苦労の末、ようやく宝を見つけることに成功したのです。

  

2.仇敵たち

 莫大な富を手にしたダンテスは、司祭に変装し昔の友人カドルッスに会いに行きます。牢屋に幽閉されてから長い歳月が経ち、ダンテスの容貌はすっかり変わってしまっていました。そのためカドルッスは司祭がダンテスだとは気づきません。 

 

司祭に扮したダンテスはカドルッスからダングラール、フェルナンのかつての悪だくみを聞き出し、更に彼らの現況に驚かされます。ダングラールは 銀行家として成功し男爵に。フェルナンに至っては軍人として成功しモルセール伯爵となり、こともあろうにメルセデスを妻としていたのです。

 

またダンテスはトムソンアンドフレンチ商会のイギリス人商人に扮し、刑務検察官のボヴィルから刑務所のダンテスの記録を見せてもらいます。そこにはダンテスが脱獄を図り海に落ちて死亡したこと、そしてヴィルフォールがダンテスの逮捕に深く関与していた形跡が記されていました。

 

ダンテスは改めてダングラール、フェルナン、ヴィルフォールに燃えるような復讐の念を抱きます。

 

一方、一貫してダンテスの味方だった船主のモレルは、所有する全ての船が遭難に会い破産寸前となってました。ダンテスはトムソンアンドフレンチ商会のイギリス人商人としてモレルに近づき彼の窮地を救います。そしてヨットに乗り込みマルセイユの町を去っていったのでした。

 

3.青年貴族と不思議な紳士

時は1838年、舞台はイタリアに代わり、二人のフランス人青年貴族、アルベールとフランツの話となります。

 

フランツはフィレンツェに滞在中、余暇でモンテ・クリスト島に上陸しますが、そこで「船乗りシンドバッド」と名乗る不思議な紳士に出会います。フランツは目隠しをされた上で、シンドバッドの地下宮殿に招待され、豪勢な食事や大麻の歓待を受けたのです。

 

その後フランツはアルベールと共に謝肉祭を過ごすため、ローマのホテルに滞在します。そこで宿の主人からルイジ・バンパという名の恐ろしい山賊の話を聞かされます。またフランツはこのルイジ・バンパと船乗りシンドバットの間に何か関係があることを知り驚きます。

 

その夜、フランツとアルベールはコロッセオ観光に出かけます。フランツはそこで二人の男の会話を立ち聞きします。二人は明日公開死刑となる山賊を助ける手立てについて話し合っていたのでした。二人の姿は見えませんでしたが、フランツはその内の一人の声に聞き覚えがあまり、彼をモンテ・クリスト島で出会った船乗りシンドバットだと信じます。

 

次の日の夜、フランツとアルベールは劇場に出かけます。フランツは桟敷席にギリシャ人と思しき美しい女性を見つけ目を奪われますが、隣の連れ添いの紳士を見て驚きます。彼こそは船乗りシンドバッドその人だったのです。やはりシンドバットはローマに来ていたのです。

 

ホテルに戻るとモンテ・クリスト伯と名乗る宿泊客から謝肉祭に使う馬車と見学のための窓を差し上げたいとの申し出がありました。フランツとアルベールは謝肉祭で使用する馬車の予約が取れずに困っていたのです。翌朝二人はお礼のためその男の部屋を訪れます。部屋の主人が現れると、そこにいたのはモンテ・クリスト島で見た船乗りシンドバッド、劇場で見た紳士、まさにその人だったのです。 

◆感想

1.善人は救われる!

第二巻の一番の見せ所は通常は手に汗握る脱獄シーンと宝の発見だと思いますが、あまりにも有名なのでそれほどの印象はありませんでした。

 

それよりも印象に残ったのはモレル氏を破産から助ける場面です。モレル氏はダンテスが逮捕された後も、自分の身の危険も顧みず、ダンテスの父親の面倒を見ていました。こういう善行を積んだ人が最後は救われるという話は、我々の感情に自然と入ってきて、スカッとしますね。特にボロボロのお財布の話は感動しました。詳しい話はぜひ小説を読んでくださいね。

 

モレル氏を助けたダンテスはヨットに乗ってマルセイユをから旅立ちます。最後の言葉が印象的です。

 なさけよ、人道よ、恩義よ、さようなら・・・ 人の心を喜ばすすべての感情よ、さようなら! ・・・わたしは善人に報ゆるため、神に代わっておこなった・・・さて、いまこそは復讐の神よ、悪しきものを懲らすため、御身に代わっておこなわしたまえ!(山内義雄訳)

やさしいダンテスとはこれでお別れです。ついに復讐が始まるのです…と思ったら、肩透かしを食らいましたが・・・。

 

2.復讐の話はまだまだ先

急に話がアルベールとフランツという青年貴族の話にかわり、いったい復讐の話はどうなったんだい?という気分になります。と言うのも2人が今までの話とどう関係があるのか最初は分かりません。注意深く読んでいればアルベール・ド・モルセールという名前から、モルセール伯爵(フェルナン)とメルセデスの子供とうことに気づく人もいるでしょう。でもhirozonは記憶力が悪いのでモルセールって誰だっけ?という感じでなかなか分かりませんでした。

 

この後も山賊の話が挿入されたり、早く先を知りたい読者としては、どうでもよい話を聞かされている感じがします。でもこれも復讐の伏線となっているので、先を急がず楽しみながら読みましょう。

 

3.ダンテスのキャラが怖い人に

 モンテ・クリスト島の地下宮殿でアリという黒人奴隷がでてきます。彼はチュニス後宮を通ったという理由で王の怒りを買い、一日目に舌を、二日目に手を、三日目に首を切られて死刑になる運命でした。それを聞いたシンドバッド(=ダンテス)は「ちょうど口の聞けない奴隷が欲しかったんだよね」と思い、二日目に銃と交換で唖となった奴隷を手に入れたのです。長い牢獄生活がダンテスをサディストに変えてしまったのでしょうかね?

 

黒人と言えば、作者のアレクサンドル・デュマ・ペールにも黒人の血が流れています。おじいさんが農場経営で現在のハイチに赴き、そこで黒人奴隷との間にできた子供がデュマのお父さんだったんですね。ひょっとしたらアリの作中での扱いも、こうしたデュマの出自と関係があるのかもしれません。

 

今日はここまでです。続きはまた。